都会に蠢く人間が放つ「気配」を綴った著書「東京という病」。この本の著者「一ノ瀬修平」は、出版社に勤める彼の良き理解者である「星野剛」の協力を得て、積年の夢である著書の出版を果たす。
しかし、喜びも束の間…ある事件をきっかけに「一ノ瀬」の中から「書く」という意欲が完全に失われてしまう。
時を同じくして「星野」も自分の夢を果たすべく、忽然と「カナダ・ユーコン準州」へと旅立ってしまう。
それから11年という長い月日が流れたある日、「一ノ瀬」はふと「なぜ?あの時「星野」は忽然と姿を消してしまったのか?」という疑問を抱き、すぐさま彼が移住した地「カナダ・ユーコン準州」を訪ねることに。
久しぶりに星野と再会した一ノ瀬。カナダ・ユーコン準州という広大な自然に囲まれたこの地と、そこに流れるゆっくりとした時間を星野と過ごす中で、一ノ瀬は自分の心が徐々に安らいでいくのを感じる。
そんなある日、星野が一ノ瀬にある提案をする。「ルーレットで俺が勝ったら、このユーコンの地をテーマに本を書け」と。
勝負は星野が勝ち、一ノ瀬はユーコンを題材とする本を書くことに…。
勝負に負けて書くことになったユーコンという場所は、取材を進めるに従って一ノ瀬の興味を駆り立てていく。
自分の価値観や環境とは全く違う人々との出会いはとても新鮮で、一ノ瀬の筆は今まで書けなかった事が嘘のように進んでいく。
「書く」という意欲を徐々に取り戻す一ノ瀬は、書けなかった11年を回想しながら、自分が長くしまいこんでいた「大事な心の記憶」を呼び覚ましていく…。