2005年作品
製作:トレヴァー・ホプキンス、監督:アンディ・ウィルソン、脚本:ガイ・アンドルーズ
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:高橋 剛、日本語版翻訳:たかしま ちせこ
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
執事ジョージ … デビッド・イェランド/堀部 隆一
※ ※ ※
アデーラ・マーチモント … ジェニー・アガター/古坂 るみ子
ローリー・クロード … パトリック・バラディ/星野 充昭
ロザリーン … エバ・バーシッスル/高橋 理恵子
デビッド・ハンター … エリオット・カウアン/大塚 明夫
リン・マーチモント … アマンダ・ダウジ/田中 敦子
フランシス・クロード … ペニー・ダウニー/大西 多摩恵
ハロルド・スペンス警視 … リチャード・ホープ/野島 昭生
キャシー・クロード … セリア・イムリー/吉沢 希梨
ライオネル・クロード医師 … ティム・ピゴット=スミス/麦人
ジェレミー・クロード … ピップ・トレンス/田原 アルノ
あらすじ
大富豪ゴードン・クロードが爆発事故で亡くなって2年。クロード家の財産は、事故の奇跡的な生還者で、財産を相続した妻ロザリーンの兄デビッドに厳しく管理されており、一族の面々は、厳しい生活を強いられていた。やがて「ロザリーンの前夫は生きている」とデビッドを脅していた、謎の男が遺体で発見される。一族をよく知り、ゴードンの姪で結婚のためにアフリカから帰国したリンを訪ねていたポワロは、事件の究明に乗り出す。
大富豪ゴードン・クロードが爆発事故で亡くなって2年。クロード家の財産は、事故の奇跡的な生還者で、財産を相続した妻ロザリーンの兄デビッドに厳しく管理されており、一族の面々は、厳しい生活を強いられていた。やがて「ロザリーンの前夫は生きている」とデビッドを脅していた、謎の男が遺体で発見される。一族をよく知り、ゴードンの姪で結婚のためにアフリカから帰国したリンを訪ねていたポワロは、事件の究明に乗り出す。
暗く、哀しく、エキセントリック
本シリーズには珍しく激しい爆発シーンで幕を開ける本話は、登場人物の悪辣さとも相まって、ホプキンス製作作品の中で最も暗く哀しい物語と言えるでしょう。見所は、物語の核となる二組の男女の行く末。倒錯と依存の歪んだ絆で結ばれたデビッドとロザリーン兄妹と、互いに想っていた筈の心が次第に剥がれて行くローリーとリンの悲恋です。また喜劇的側面では、くせ者揃いのクロード一族に加え、体格も言動も強烈無比のレドベター夫人ら、エキセントリックなキャラクターの面々。その滑稽さがゆえに、結末で露わになる彼らの本性もまた一層、ブラックです。
タイトルは、原作においてポワロが謎解きの際に用いた比喩であるシェークスピア作『ジュリアス・シーザー』4幕3場のブルータスの言葉、"うまく満潮に乗りさえすれば運はひらける・・・"から採られています。
ポワロの執事
初登場となるポワロの執事、ジョージ。事件と主体的に関わるわけではありませんが、ポワロの生活面をサポートする新たなセミ・レギュラーです。主人をよく理解しており、書棚を不規則に整理したメイドの管理不行届きを詫び、食卓にはきちんと大きさの揃った卵を二つ揃える等、ポワロの満足を満たします。
演じるデビッド・イェランドは、本シリーズのスタート間もない『ミューズ街の殺人』で、被害者の婚約者レイヴァートン・ウェスト下院議員役も演じました。15年以上経った今回の出演では齢を重ねた風貌ながら、感情を表に出さない典型的な英国執事という原作の設定に格好の演技を見せています。
『007』と『日の名残り』
人を食った言動でポワロを煙に巻くライオネルに扮するティム・ピゴット=スミスは、'70年代から舞台とTVを中心に活躍する英のヴェテラン俳優で、ピーター・ユスティノフがポワロを務めたTVムービー『死者のあやまち』(1986)にも出演。近年の映画では『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)、『007/慰めの報酬』(2008)等で見ることができます。
リン帰国の報をポワロに伝えるジェレミーに扮するは、『スペイン櫃(ひつ)の秘密』でリッチ少佐を演じたピップ・トレンス。当時とは歳も役柄も違いますが、印象深い眼光の鋭さは変わりません。彼は『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997)の他、ティム・ピゴット=スミスと同じく『日の名残り』(1993)にも出演しています。