1995年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:エドワード・ベネット、脚色:クライブ・エクストン
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ジャップ … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
※ ※ ※
シメオン・リー … ヴァーノン・ドブチェフ/大塚 周夫
アルフレッド … サイモン・ロバーツ/安原 義人
リディア … キャサリン・ラベット/田島 令子
ジョージ … エリック・カート/堀 勝之祐
マグダレーナ … アンドレー・バーナード/宗形 智子
ハリー … ブライアン・グワスパリ/大塚 明夫
ピラー … サーシャ・ベアール/島本 須美
サグデン … マーク・タンディ/江原 正士
ステラ … オルガ・ロウ/井上 瑤
ホーバリー … アユブ・カーン・ディン/辻 つとむ
あらすじ
ポワロはシメオン・リーという人物から自分の館に来てクリスマスを過ごし、自分の命を守ってもらいたいとの依頼を受ける。シメオンの館には、長男アルフレッドとその妻リディア、次男ジョージと妻マグダレーナ、それにシメオンの親族であるピラーと家を出ていた三男ハリーも招かれていた。横暴なシメオンは、皆の前で遺言の変更を宣言するが、その夜、何者かに殺されてしまう。ポワロは、サグデン警視とジャップ警部と共に、この密室殺人の捜査を開始する。
ポワロはシメオン・リーという人物から自分の館に来てクリスマスを過ごし、自分の命を守ってもらいたいとの依頼を受ける。シメオンの館には、長男アルフレッドとその妻リディア、次男ジョージと妻マグダレーナ、それにシメオンの親族であるピラーと家を出ていた三男ハリーも招かれていた。横暴なシメオンは、皆の前で遺言の変更を宣言するが、その夜、何者かに殺されてしまう。ポワロは、サグデン警視とジャップ警部と共に、この密室殺人の捜査を開始する。
長編の魅力
このドラマシリーズも本話からいよいよ完全な長編期に入ります。伏線とミスリードを積み重ね、溜めに溜めた大団円でそれらを見事に一枚絵として描き、執念の動機と意外な犯人を明かしてあっと言わせるカタルシスに満ちたクリスティ作品のプロットは、実に長編向きと言えるでしょう。
今回は珍しく、心理的錯覚より物理的仕掛けに凝った密室が扱われています。真相を聞けば難しくはありませんが、初見でそのトリックを見抜くにはいささか想像力が必要でしょう。ただ密室の仕掛けが判れば、意外な犯人の見当もつく筈です。また密室の仕掛けに繋がる手掛かりも、犯人像についての示唆も、暗示ながら、かなり明確な形で物語の中に提示されています。
小説は赤く、ドラマは白く
原作小説は、クリスティの姉の夫ジェームズ・ワッツが、もっと血生臭い物語をと望んだリクエストに応え書き上げたものとされ、彼に捧げる献辞も記されています。舞台となるゴーストン・ホールも、イングランドの大マンチェスタ州ストックポートにあるジェームズの実家アブニー・ホールをモデルとしたそうです。
ドラマのロケ地はケント州チルハム。撮影は放送前年の4月に行われ、見るからに寒そうな雪の情景は、実は、裁断した紙で作ったものだそうです。
かくて夫人は幻となりけり
カミさんの実家にて、歌に興じる親戚たちを横にうんざりするジャップ。さてこの場面、一同の中には二人の婦人が。つまり、このどちらかがジャップ夫人である可能性もあるわけですが、残念ながら本シリーズでその答が明かされることはありませんでした。
シメオンを演じたヴェテラン達
強欲と傲慢のシメオン・リーを演じたヴァーノン・ドブチェフは、欧米の作品に数多く出演している仏のヴェテラン俳優。日本でおなじみの映画には、『屋根の上のバイオリン弾き』(1971)、『ジャッカルの日』(1973)、『007/私を愛したスパイ』(1977)、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)など娯楽・痛快作が目立ちます。アルバート・フィニーがポワロに扮した映画『オリエント急行殺人事件』(1974)にも、コンシェルジュの端役ながら出演しています。
本話の日本語版で、若き日と老シメオン両方の声を吹き替えたのも大ヴェテラン俳優の、大塚 周夫氏。そしてそのシメオンの息子の一人、奔放なるハリーの声を担当した大塚 明夫氏は、周夫氏のご子息。つまり親子役を親子で共演していたというわけです。