1991年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:ブライアン・ファーナム、脚色:デビッド・レンウィック
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
※ ※ ※
ジョン・ハリスン … マーティン・ターナー/津嘉山 正種
モリー・ディーン … メラニー・ジェソップ/高島 雅羅
クロード・ラングトン … ピーター・カパルディ/三ツ矢 雄二
ベルベデア … ジョン・ボズウォール/糸 博
ヘンダーソン夫人 … ケイト・リン=エバンズ/山田 礼子
あらすじ
旧友の息子で著述家ハリスンの家でスズメバチに刺されたポワロは、薬局に薬を買いに行った。ハリスンの婚約者モリーの前の恋人で、今は友人として良好な関係だというクロードの名前を劇薬の購入者名簿にみつけたポワロは、直前にモリーが車のブレーキの故障で事故を起こしていたこともあって嫌な予感を抱く。事件を未然に防ごうとするポワロは、やがて真実が思い描いていたものと異なる顔を持つことに気がつくのだった。
旧友の息子で著述家ハリスンの家でスズメバチに刺されたポワロは、薬局に薬を買いに行った。ハリスンの婚約者モリーの前の恋人で、今は友人として良好な関係だというクロードの名前を劇薬の購入者名簿にみつけたポワロは、直前にモリーが車のブレーキの故障で事故を起こしていたこともあって嫌な予感を抱く。事件を未然に防ごうとするポワロは、やがて真実が思い描いていたものと異なる顔を持つことに気がつくのだった。
屈指のエンディング
穏やかさの陰に深い苦悩が見え隠れする著述家。その美しい婚約者は時に謎めいた行動を見せ、彼女の元恋人は二人のよき友として振舞う端々に隙が見える。そんな三人に出会って早々、まだ起きぬ事件を予感し、悲劇を防ごうと奔走するポワロ。
これまでと打って変わった展開を見せる本話は、解決編においてもかなり違った趣を見せます。殺意を見抜かれたその人物がポワロと対峙する、哀感漂う幕切れは、短編シリーズの中でも屈指の名エンディングと言えるでしょう。
雑誌と紅茶
スカーフとサングラス姿のモリーを一目で、雑誌で見かけたファッション・モデルだと思い出すヘイスティングス。果たして、モリーの車には彼女が表紙を飾る雑誌がありましたが、これは、日本版をふくめ現在も刊行されているファッション雑誌「ヴォーグ」。1892年にアメリカで創刊、1910年代に入ってイギリスを皮切りに国外展開を始めて、ファッションの最先端を司って来た、有名モデルの登竜門としても知られる雑誌です。
序盤、祭の会場でポワロが手なぐさんでいるお茶の葉占いは、日本ではあまりなじみがありませんが、茶漉しを使わなかった当時、少なからずカップに残った紅茶の葉の形や量で占うやり方で、その易の判別も実に様々だったそうです。ポワロもその道に長けた風ではありますが、事件を予感した易は、実は細かな観察の結果だったところがいかにもな感じで楽しめます。
幻?の夫人
今回も、拝めそうで結局は姿を見せないジャップのカミさん。「こっちにいる妹のところに来てるんで駅で待ち合わせることにした」と話に親戚が登場したり、「お茶を飲みながらおしゃべりを始めると時間を忘れちまうのが悪いクセ」と云う愚痴、挙句にその妹が風邪をひいた為に来るのを止めていたオチに至るまで、"居るけど居ない"工夫がいよいよもってコロンボ風になって来たところが笑えます。