1991年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:アンドリュー・ピディントン、脚色:ロッド・ビーチャム
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
※ ※ ※
ハリデイ … ジョン・ストーン/小林 昭二
マッケンジー … ケネス・ヘイグ/小林 勝彦
ルパート・キャリントン … ジュリアン・ワダム/江原 正士
ロシュフォール伯爵 … アルフレッド・マイケルソン/西沢 利明
ジェーン・メイソン … マリオン・ベイリー/大方 斐紗子
フロレンス・キャリントン … シェラー・マクロード/勝生 真沙子
あらすじ
列車の座席下から心臓を突き刺された女性の死体が発見される。刺殺された女性は、オーストラリア人の実業家の一人娘フロレンス。実はポワロは彼女の父親ハリデイから、娘との仲をかつて引き裂いたフランス人伯爵が再び娘に近づいていることで相談を受けていた。怪しいのは伯爵か?離婚間近の夫か?フロレンスと同じプリマス行き急行列車に乗り込んだポワロは、灰色の脳細胞を働かせ、この難事件の解決を図る。
列車の座席下から心臓を突き刺された女性の死体が発見される。刺殺された女性は、オーストラリア人の実業家の一人娘フロレンス。実はポワロは彼女の父親ハリデイから、娘との仲をかつて引き裂いたフランス人伯爵が再び娘に近づいていることで相談を受けていた。怪しいのは伯爵か?離婚間近の夫か?フロレンスと同じプリマス行き急行列車に乗り込んだポワロは、灰色の脳細胞を働かせ、この難事件の解決を図る。
悲しみの幕切れ
これまでの回と比べて事件の推移や語り口が特段変わったということもなく、ユーモラスな味付けも皆無ではない本話です。しかしながら、真相が暴かれるシーンでは殺害の様子が直裁に描写され、このシリーズの大半の物語の核である"殺人"という行為がいかに酷いものかを再認識させるようなインパクトがあり、あまつさえラスト・シーンで、娘を失った父親の悲しみを偲ぶ悲嘆のムードが醸されているところが、本話のポイントのひとつと言えるでしょう。
なお、まだかなり先となりますが、シリーズ後半の半ばにラインナップされている『青列車の秘密』をご覧になりますと、物語の構造が本話に近いとお判りになる通り、同作品の原作長編は、本話の原作短編を発展させて綴られたということです。
意外にハードボイルド
今回は、被害者フロレンスを巡る不逞な紳士二人が判り易い容疑者として明示され、ポワロを挟んで、ヘイスティングスとジャップがそれぞれを調べる様が並行して描かれるという、有りそうでなかなか無かった対称構造が面白いところ。
その上で、犯人は絶対ヤツだと息巻く両君の至らぬ点を指摘したポワロが、ミス・レモンの"素晴らしいファイル"を活用し思ってもみなかった犯人像へと近付いていく、そのいささかハードボイルドな過程で、まだ年齢的な衰えを感じさせぬ彼の行動派な一面が見られて楽しい一編です。
骨太なる声と顔
富豪ハリデイ氏を演じるジョン・ストーンの声を吹き替えた小林 昭二氏は、声の出演と共に顔見せの仕事においても、一定の年齢以上の視聴者に圧倒的な存在感を誇る大ヴェテラン。吹替では、持ち役である西部劇の巨人ジョン・ウェイン。ドラマでは『ウルトラマン』のムラマツ隊長に、『仮面ライダー』シリーズの立花 藤兵衛をレギュラーで演じ、正にアクションものにおける骨太キャラクターの雄とも言える名優でした。