1990年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:リチャード・スペンス、脚色:クライブ・エクストン
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
※ ※ ※
ドゥガル警部 … バリー・ウールガー/岡部 政明
ヘンリク・バン・ブラクス … ストルアン・ロジャー/仲村 秀生
マリー・マーベル … ロザリンド・ベネット/榊原 良子
グレゴリー・ロルフ … オリヴァー・コットン/瑳川 哲朗
ヤードリー卿 … アリスター・キャメロン/二瓶 秀雄
レディー・ヤードリー … キャロライン・グッドオール/池田 昌子
ホフバーグ … ブルース・モンタギュー/加藤 正之
あらすじ
ポワロは、ベルギーの人気映画スター、マリー・マーベルから、彼女が夫から贈られた西洋の星と呼ばれる「ダイヤを返せ」と要求する脅迫状を見せられる。一方、「西洋の星」と対になるという「東洋の星」の持ち主であるレディー・ヤードリーも脅迫状を受け取っていた。《中国の神の目にはめられていた》という二つの宝石に"事件"を感じたポワロは、やがて2つのダイヤと2人の夫人を結ぶ一本の線、卑劣な男の企みを暴きだす。
ポワロは、ベルギーの人気映画スター、マリー・マーベルから、彼女が夫から贈られた西洋の星と呼ばれる「ダイヤを返せ」と要求する脅迫状を見せられる。一方、「西洋の星」と対になるという「東洋の星」の持ち主であるレディー・ヤードリーも脅迫状を受け取っていた。《中国の神の目にはめられていた》という二つの宝石に"事件"を感じたポワロは、やがて2つのダイヤと2人の夫人を結ぶ一本の線、卑劣な男の企みを暴きだす。
二つの星の事件
宝石絡みの悪事が匂うふてぶてしい輩、バン・ブラクスをジャップ主任警部がマークするプロローグに始まり、"西洋の星"と"東洋の星"の名を冠する二つのダイヤと、その所有者たる二人の美女を巡る脅迫が相次ぎます。更にその一人、レディー・ヤードリーの東洋の星を眼前で奪われてしまったポワロとヘイスティングスは、直後にバン・ブラクスを追って来たジャップと交錯。事件は複雑な様相を呈すかに見えましたが…。
魅惑の宝石を巡る暗躍者の謎もさることながら、本話最大の魅力は、ポワロも魅せられた美女二人でしょう。ポワロの故郷ベルギーのスターであるマリー・マーベルと、子爵の麗夫人たるレディー・ヤードリー。薄幸に涙する二人それぞれに尽くす、ポワロの処し方にもご注目を。
純粋と単純
ポワロの留守に、レディー・ヤードリーを迎えてそのトラブルを明快に推理してみせた探偵ヘイスティングス。と思いきや、捜査が進むにつれ、いちいちプリミティブな質問を連発、ほとんど何も分かっていないことが露呈していくヘイスティングス。
エピローグでは、例によって女性心理の複雑さと、ポワロの手料理の味もまるで分かっていないとダメ押しされた彼が発したのは、一周回って事件の振り出しに戻る疑問。ずいぶん前に暴かれた謎なのに…。その桁違いなシンプルさが、今回は、ちょっと過剰な気もします。
プロフィール:アーサー・ヘイスティングス[1]
これまでも断片的に触れてきましたが、そんなヘイスティングスの人となりについて、ここであらためて整理し、簡単にご紹介しておきましょう。
第一次大戦時は陸軍所属で、前線で足を負傷し銃後に還ります。この時の階級は中尉。療養中に友人に誘われて過ごしたスタイルズ・セントメアリー村で旧知のポワロと再会。更に、その友人の家を襲った殺人事件の捜査でポワロを手伝い、それを契機に、ロンドンで共に探偵業を営む身となります。なお、退役後は大尉と呼ばれています。
端正なマスクと柔和な表情、スーツの似合うスリムな長身、フェミニストの好男子ですが、その割に恋愛的には不遇な時を長く過ごしています。スポーツ好きで、ゴルフ、クリケット、カー・レースに夢中。愛車はラゴンダ。
稚気に溢れ、探偵に憧れるほど好奇心旺盛で冒険好き。単純さと子供っぽさがポワロと対照的で、俗っぽさはジャップと共通する特性。総じて、子供のようにピュアでシンプルな精神を保ち続ける魅力的な青年で、そこがポワロに気に入られている点でもあるのでしょう。
本シリーズ全70話中に43回と、ポワロを除く最多登場のレギュラーです。