1990年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:エドワード・ベネット、脚色:マイケル・ベイカー、デビッド・レンウィック
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
※ ※ ※
ピアソン頭取 … アンソニー・ベイト/村松 康雄
チャールズ・レスター … コリン・スティントン/中田 浩二
レスター夫人 … バーバラ・バーンズ/弘中 くみ子
レジー・ダイアー … ジェームズ・サクソン/島香 裕
中国人 … ヴィンセント・ウォン/石森 達幸
ホテルのフロント係 … リチャード・アルブレヒト/谷口 節
銀行の出納係 … ジュリアン・ファース/江原 正士
あらすじ
ロンドン・シャンハイ銀行の頭取は、銀の鉱山の所在を示す地図を売りにくる中国人、ウー・リンを待っていた。ところが彼は現れず、翌日、波止場のカジノの近くで遺体となって発見される。ポワロとジャップ警部は、この怪しげな事件の解決に挑む。ウー・リンの手帳にあった株式仲買人のレスターの供述から、ジャップ警部がチャイナタウンに事件を解く鍵があると考え聞き込みを始めた一方で、ポワロはレスター夫人を訪ねていた。
ロンドン・シャンハイ銀行の頭取は、銀の鉱山の所在を示す地図を売りにくる中国人、ウー・リンを待っていた。ところが彼は現れず、翌日、波止場のカジノの近くで遺体となって発見される。ポワロとジャップ警部は、この怪しげな事件の解決に挑む。ウー・リンの手帳にあった株式仲買人のレスターの供述から、ジャップ警部がチャイナタウンに事件を解く鍵があると考え聞き込みを始めた一方で、ポワロはレスター夫人を訪ねていた。
犯罪捜査と謎解き
いわくありげな中国人の登場と失踪を発端に、銀鉱山の地図の行方に絡む殺人へと発展する事件。背景の一端となるチャイナタウンの暗部や、ジャップ主任警部が誇るスコットランド・ヤードの近代的捜査体制の描写を織り込み、犯罪・警察ドラマのトーンを強くする本話ですが、それでもポワロが早くから犯人に疑いを持つきっかけ等、思わぬ場面にも伏線が配され、結末ではやはり意外な犯人が明かされる、謎解き趣向の一編です。
なお、本話で描かれている1930年代当時のこのチャイナタウンはロンドン東部のライムハウスにありましたが、第二次大戦時の空襲で壊滅。現代のライムハウスの様相は当時と激変しているため、同じく東部のベスナル・グリーンにセットを組んで撮影されたそうです。
勝負するポワロ
今回の物語は、"勝負事"を横軸に編まれているようです。事件と並行しヘイスティングスとモノポリーに血道を上げるポワロ。レモンと共に株価を吟味し、更に事件に関わる株式仲買人レスターの投資術に大いに興味を抱くヘイスティングス。本編ではカットされたシーンのようですが、チャイナタウンのクラブ、レッドドラゴンらしき場所でポワロがカードの手合わせをしているような宣材写真も存在します。そして何より、ポワロは結末で犯人を追い込む際、ある種の勝負を挑みます。
ちなみに、現在も世界中に愛好家のいるモノポリーは、本話で描かれている通り、不動産投資シミュレーションによって相手を破産に追い込むゲームで、1930年代半ばに発売された当時、投資への関心が広まっていた世相を背景に大ヒットしたそうです。
ジャップの部下
捜査のシーンが多い今回は、ジャップの部下も多く出てきます。主だった活躍がないと分かりづらいでしょうが、シリーズに登場する警察官の中には僅かながら複数話で顔を見せている者もいて、一番分かりやすい例は、本話でジャップに付き従っている私服警察官のジェームソンでしょう。よく似た口髭とコート姿で"小柄なジャップ"といった佇まいを、シリーズ開始間もない『ミューズ街の殺人』でも披露していました。