英国テレビ文庫itvコレクション名探偵ポワロ徹底解説 名探偵ポワロ徹底解説TOP 英国テレビ文庫itvコレクション特設サイト ベールをかけた女

1990年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:エドワード・ベネット、脚色:クライブ・エクストン
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子

ベールをかけた女

出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
      ※   ※   ※
レディー・ミリセント … フランシス・バーバー/小原 乃梨子
ラビントン … テレンス・ハーヴェイ/有川 博
ゴッドバー夫人 … キャロル・ヘイマン/寺島 信子

あらすじ
ポワロたちが、最近起きた宝石泥棒の話をしていると、伯爵令嬢のミリセントがある捜査の依頼をしにやってくる。公爵と結婚することになっている彼女は、ラビントンという男に、昔の恋人に出した手紙をネタにゆすられており、その手紙を取り返してほしいというのだ。ポワロはラビントンと交渉するが、話は決裂する。やむなく、ポワロはヘイスティングスと共にラビントン家に押し入るが…。事態はやがて、意外な展開をみせる。

異色の娯楽編
長編のボリュームを見せつけてくれた前話でしたが、本話から再び、凝縮されたエッセンス堪能の短編期に戻ります。
我が正義は法律によって縛られずとばかり、錠前屋に変装し珍妙なる前工作をした上で、ヘイスティングスと二人して恐喝者宅に侵入し盗みをはたらき、その挙句に逮捕拘留されてしまうポワロ。ヘイスティングスはポワロを見捨ててさっさとずらかり、ポワロを受け出しに来たジャップはこれでもかと皮肉を放ちます。更に、真相が見えた後でも結構な時間がアクションに充てられたりと、謎解きよりむしろ娯楽編の色濃い、シリーズ中でも異色の一作。何しろ、ポワロがここまでラジカルに行動する回は極めてまれと言えるでしょう。

狂犬と呼ばれた賊
実は、偉大なる探偵が今回見せた変装の最大のポイントは、労働者風の服でも、軽やかに自転車を漕いで行くその姿でもありません。彼にとって最も気を使ったであろうそれとは、英国一気品に満ちた"髭(ひげ)"。何と、常日頃に手入れする向きとは全く逆に整えられ、従って見た目の印象も普段と正反対に見えるはず…といったことなのでしょうか。ちなみに、その髭専用のくしをはじめ、釈放の際に返却された鼻眼鏡や指輪といった品々は、彼が常用し身に付ける必携の小物です。
ところでこの髭は、ポワロに扮するスーシェ氏自前のものではなく、毎回、撮影前に時間をかけてメイクしているそうです。しかし付け髭の悲しさか、注意深く見ると回によって僅かながら形状に違いが出てしまっているとか。

ポワロにキス
撮影と並行して撮られるパブリシティ用スチルの中には、本編では編集でカットされたシーンの情景が写っているものもあります。本話でも、本編中にはないシーンですが、麗しきレディー・ミリセントと思しき女性がポワロの頬にキスしている宣材写真が存在します。画柄から察するに、ラストのアクションの締めくくりの場面ではないかと思われますが、カットされてしまったにせよ、本話をご覧になれば、その経緯も何となく想像がつくかもしれません。
ちなみにこのミリセント役のフランシス・バーバーは、シリーズ終盤の『複数の時計』に、別役で再出演しています。
PDFで印刷
  • 前へ
  • 次へ