1989年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:エドワード・ベネット、脚色:マイケル・ベイカー
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
※ ※ ※
パトリシア・マシューズ … スザンヌ・バーデン/小山 茉美
ドノバン … ニコラス・プリチャード/神谷 明
ジミー … ロバート・ハインズ/大塚 芳忠
ミルドレッド … アマンダ・エルウェス/島本 須美
グラント夫人 … ジョシー・ローレンス/宗形 智子
トロッター … スーザン・ポレット/竹口 安芸子
サドラー少佐 … ジェームズ・エイダン/島田 敏
サドラー夫人 … ジリアン・ブッシュ・ベイリー/浅井 淑子
あらすじ
夜遅くアパート内で物音が聞こえた。ポワロの部屋の下の階に住むパトリシアの婚約者ドノバンと友人のジミーが荷物用エレベーターを使う音だった。パトリシアが部屋の鍵をなくしたことから部屋にもぐり込むためだったのだが、誤った部屋に入ってしまった2人はそこで横たわる死体を発見する。暇を持て余し気味だったポワロは、アパートの階下で起きた殺人事件に挑み、現場の小さな矛盾点から犯人と犯人が隠したい秘密に辿りつく。
夜遅くアパート内で物音が聞こえた。ポワロの部屋の下の階に住むパトリシアの婚約者ドノバンと友人のジミーが荷物用エレベーターを使う音だった。パトリシアが部屋の鍵をなくしたことから部屋にもぐり込むためだったのだが、誤った部屋に入ってしまった2人はそこで横たわる死体を発見する。暇を持て余し気味だったポワロは、アパートの階下で起きた殺人事件に挑み、現場の小さな矛盾点から犯人と犯人が隠したい秘密に辿りつく。
足下(あしもと)の事件
今回の事件発生は事務所の階下、正しくポワロの足下で起きた事件です。"鍵がないので荷物用エレベーターから部屋に入ったつもりが別の部屋で、そこには死体が転がっていた"という何ともトリッキーな展開と、裏に隠された真相のユニークさも秀逸、ミステリ・ファン好みの好編と言えるでしょう。
なお、イギリスではこうした建物の階層の数え方が日本とは異なり、日本で言う1階はground floor、2階がfirst floor、したがって英題のthird floorは邦訳では4階になります。flatは、日本で言うところのマンションやアパートにあたる建物のことです。
陳腐なミステリ
ところで、事件のまくらに、ポワロたちと、事件に巻き込まれるパトリシアたちが偶然にも同じく鑑賞していた推理劇にまつわる、皮肉なユーモアについて。結末前に犯人を言い当てる賭けをしたポワロが見事に外した「犯人は執事」という推理ですが、この表現は、古典ミステリにおける"ありふれた常套プロット"として揶揄される際によく使われるもの。 また、憤慨したポワロが「事実が全て隠されている」「おしゃべりするしか能のない警部を登場させて、それまで観客には一切知らせていなかった事実を次々と…」となじる意見は、謎解きの手がかりをフェアに読者に提供してその推理を問うべき本格ミステリにおいて、なかなかそうはいかない諸作に浴びせられがちな苦言です。
ホワイトヘヴン
今回は事件現場として頻繁に画面に映るホワイトヘヴン・マンションは、対称性(シンメトリー)を好むポワロが居所として見出した稀有なデザインの建物。そのイメージをよく具現している外観ショットとして撮影されたのは、実際には、ロンドンのチャーターハウス・スクエアそばのフローリン・コートというマンションです。ストック映像として、見覚えのあるショットが今後も何度となくお目見えしますが、本話で見られる夜の外観は比較的、珍しいものと言えます。 なお、マンション内は別撮りらしきシーンも多く、また独特に調度されたポワロの部屋は、撮影所に組まれたセットが使われているそうです。