1989年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:レニー・ライ、脚色:ラッセル・マレー
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
※ ※ ※
ジョージ・ロリマー … リチャード・ハワード/納谷 六朗
トミー・ピンナー … トニー・エイトキン/小島 敏彦
ハリー・クラーク … ジェフリー・ラーダー/堀内 賢雄
ボニントン … デニス・ホーソーン/辻村 真人
ダルシー・レイン … ホリー・デ・ジョン/増山 江威子
メイキンソン … クリフォード・ローズ/塚田 正昭
カッター … フィリップ・ロック/藤城 裕士
ヒル夫人 … ヒラリー・メーソン/中村 紀子子
アイリーン・マレン … マージー・ローレンス/鵜飼 るみ子
エディス … スー・エリオット/翠 準子
あらすじ
友人とレストランで食事をしていたポワロは、ある年老いた常連客の話を聞いて興味をそそられる。その客は、水曜と土曜にそのレストランで食事をする習慣だったのに前週の月曜に突然現れ、嫌いなはずの料理を注文したというのだ。しかも翌日、新聞にその男が死んだという記事が載る。老人の習慣からの逸脱、そしてその死に疑問を抱いたポワロは、自ら調査を始める。やがて死んだ男双子の兄弟も数日前に病死していたことがわかる。
友人とレストランで食事をしていたポワロは、ある年老いた常連客の話を聞いて興味をそそられる。その客は、水曜と土曜にそのレストランで食事をする習慣だったのに前週の月曜に突然現れ、嫌いなはずの料理を注文したというのだ。しかも翌日、新聞にその男が死んだという記事が載る。老人の習慣からの逸脱、そしてその死に疑問を抱いたポワロは、自ら調査を始める。やがて死んだ男双子の兄弟も数日前に病死していたことがわかる。
奇妙な味の"黒つぐみ"
いつも習慣的に繰り返している行動、例えば同じ曜日に同じレストランで同じメニューを頼むといった行動を常とする人物が、前ぶれもなく違う曜日に現れ違うメニューを食し、やがて死体で発見される…。こうした些細だが非日常的な異変であったり、唐突で奇態な出来事が、恐ろしい事件へ根を這わせていくというイントロダクションは、クリスティ作品のひとつの持ち味です。本話は些細な日常のアフェアといった口ですが、エキセントリックな部類ではホラー・タッチの作品まであります。もちろん本話をはじめ、これら全ては巧みなプロットで編まれた犯罪ストーリーのからくりであり、超自然の出来事として描かれる物語はありません。
お気に入りのマザー・グース
クリスティは英米で親しまれている童謡マザー・グースがお気に入りらしく、自著においてもよく、作中でちなんだり題名にもじったりしています。本話のタイトルの素はその内のひとつである『6ペンスのうた』の一節、"パイに詰めて焼かれた24羽の黒つぐみ"の件。ポワロはレストランで見かけた老人が食した常ならぬメニュー、黒イチゴのケーキからこの黒つぐみを連想し、口ずさんでいます。
創設者エクストン
前話『ジョニー・ウェイバリー誘拐事件』までの立ち上がり3話分においてドラマタイズでクレジットされていたメイン・ライターのクライブ・エクストンが、本話ではその役割をラッセル・マレーに任せ、自身はスクリプト・コンサルタントに就いています。スクリプト・コンサルタントとは大づかみに言えば脚本アドバイザーと云うような職能だそうですが、本話以降もドラマタイズと交互に担当し、結局、このドラマの基本形成期となる第1シリーズ10話分の全てにおいてストーリー形成に関わりました。
エクストンは、プロデューサーのブライアン・イーストマンの良きパートナーとして、ドラマの世界観を構築していった創設クルーの一人。第二次大戦前後の時代にわたって描かれている原作小説を、ドラマ化に際して1930年代に絞り込んでいったのも、二人のアイディアだったそうです。