1989年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:レニー・ライ、脚色:クライブ・エクストン
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
※ ※ ※
マーカス・ウェイバリー … ジェフリー・ベイトマン/樋浦 勉
エイダ・ウェイバリー … ジュリア・チェンバーズ/一柳 みる
ジョニー・ウェイバリー … ドミニク・ルージェ/中村 幸介
トレッドウェル … パトリック・ジョーダン/上田 敏也
ジェシー・ウィザース … キャロル・フレイザー/吉田 理保子
ミス・コリンズ … サンドラ・フリーマン/前田 敏子
ロジャース … ロバート・プット/宮内 幸平
ヒューズ … パトリック・コナー/石森 達幸
あらすじ
地方の大地主マーカス・ウェイバリーが、ポワロのところへ相談に訪れる。5万ポンドを支払わないと、翌日息子ジョニーを誘拐するという脅迫状を受け取ったと言うのだ。ヘイスティングスは、ウェイバリーの話を半信半疑で聞いていた。ポワロは、ウェイバリーを連れてジャップ警部を訪ねるが、ジャップ警部もまた事件としては扱ってくれない。しかし、事件を未然に防ぐことが重要だと考えるポワロは、ウェイバリー邸に向かう。
地方の大地主マーカス・ウェイバリーが、ポワロのところへ相談に訪れる。5万ポンドを支払わないと、翌日息子ジョニーを誘拐するという脅迫状を受け取ったと言うのだ。ヘイスティングスは、ウェイバリーの話を半信半疑で聞いていた。ポワロは、ウェイバリーを連れてジャップ警部を訪ねるが、ジャップ警部もまた事件としては扱ってくれない。しかし、事件を未然に防ぐことが重要だと考えるポワロは、ウェイバリー邸に向かう。
私立探偵の生業
犯罪の中でも殺人は、物語に、より劇的な展開をもたらす題材ではあるでしょう。しかしながら私立探偵を生業とするポワロが扱う事件はそれのみにあらず、プライドが許せばそれ以外の依頼も引き受けます。ポワロの人生譚でもあるこのドラマシリーズは"殺人への断罪"がテーマの一つであり、回を重ねるにつれ事件はほぼ殺人のみとなっていきますが、しかしシリーズ中盤までの短編においては誘拐や盗難といった、血臭のしない幾らかライトな話も語られます。 その一つである本話ですが、ジョニーをさらうトリックも誘拐の真相となる構図も、現在から見ればさすがに古典的に映るでしょうが、巧みなプロットを旨とするクリスティのミステリとしては原型とも言える小品です。
人気シリーズの秘訣
本話で注目されたいもうひとつのライトは"明るさ"。即ち、高らかに歌いながら疾走する車上のポワロとヘイスティングス、更には、車のエンコで慣れぬ行軍を強いられたポワロがウェイバリー邸でへばった足の行水としゃれ込んでいるその姿は、いささか不謹慎ながらも事件のムードとギャップのある爆笑もののシーン。いずれも本来の筋には本質的に関係しないコメディ・リリーフですが、しかし、こうしたユーモアの積み重ねが魅力あるキャラクターづけとなり、シリーズの人気の源泉ともなっています。
ラゴンダとスワン
前話『ミューズ街の殺人』でも、少年と共に車のメカをいじるシーンで示されていたように、カー・マニアのヘイスティングス。その愛車は美しきラゴンダ。シリーズでも今後しばらくの間、活躍します。 一方、ポワロの外出時に欠かせぬ愛用品と言えば、スワンの握りのついたステッキ。本話では、それを持ったままラゴンダに乗り込んでいるシーンでよく確認できます。何種類かある彼のステッキの中で最も使用頻度が高く、普段の外出時にはほぼ例外なく持ち歩き、シリーズでも長くお目見えしています。