2009年作品
製作:カレン・トラッセル、監督:アシュレイ・ピアース、脚本:ニック・ディア
日本語版プロデューサー:武士俣 公佑、間瀬 博美、日本語版演出:佐藤 敏夫、日本語版翻訳:日笠 千晶
出演:
ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ジョージ … デビッド・イェランド/坂本 大地
※ ※ ※
サー・チャールズ・カートライト … マーティン・ショー/佐々木 勝彦
エッグ … キンバリー・ニクソン/坂本 真綾
サー・バーソロミュー・ストレンジ … アート・マリック/押切 英季
ミス・ミルレー … スザンヌ・バーティッシュ/安芸 けい子
シンシア・デイカーズ … アナスタシア・ヒル/唐沢 潤
デイカーズ大尉 … ロナン・ヴィバート/水内 清光
ミス・ウィルズ … ケイト・アシュフィールド/山像 かおり
レディー・メアリー … ジェーン・アッシャー/相沢 恵子
バビントン夫人 … アンナ・カートレット/羽鳥 靖子
バビントン牧師 … ナイジェル・ペグラム/曵地 伸之
オリヴァ・マンダース … トム・ウィズダム/浜田 賢二
クロスフィールド警視 … トニー・マーズリー/石田 圭祐
あらすじ
引退した俳優チャールズ・カートライト卿宅のパーティーで、カクテルを飲んだ老牧師が亡くなった。その数か月後、今度はカートライト卿の友人である精神分析医がパーティーの席でワインを飲んだ直後に亡くなる。2つのパーティーの招待客がほとんど同じだったことから、カートライト卿と彼の恋人エッグは、客人たちを調べ始め、劇作家が犯人であると考える。果たして、ポワロが考える犯人とは?ポワロは、事件関係者を劇場に集める。
引退した俳優チャールズ・カートライト卿宅のパーティーで、カクテルを飲んだ老牧師が亡くなった。その数か月後、今度はカートライト卿の友人である精神分析医がパーティーの席でワインを飲んだ直後に亡くなる。2つのパーティーの招待客がほとんど同じだったことから、カートライト卿と彼の恋人エッグは、客人たちを調べ始め、劇作家が犯人であると考える。果たして、ポワロが考える犯人とは?ポワロは、事件関係者を劇場に集める。
演劇へのオマージュ
本話は題名からも分かる通り演劇をモチーフとした一編で、物語にはその要素が散りばめられ、原作小説は更に構成や体裁までそれを意識した作りになっています。原作ではサタースウェイトという他のクリスティ作品でも活躍するキャラクターと、カートライト、エッグが中心となっており、ポワロも登場するものの、彼らに比べると影の薄い位置づけです。ドラマでは例によってと言うべきか、サタースウェイトの存在は割愛されました。
原題の『THREE ACT TRAGEDY』は英版の原作小説の通りですが、米版の原作小説ではタイトルが『MURDER IN THREE‐ACTS』であるだけでなく、基本は同じ物語ながら殺人の動機等が微妙に異なる、言わばヴァージョン違いとなっています。なお、本ドラマの内容は原題通り英版に沿っています。
二人のポワロ、二種の動機
この原作はまた1986年、米のワーナーブラザースにより、スーシェの先達であるピーター・ユスティノフ主演でTVドラマ化されています。舞台は現代のアカプルコに置き換えられ、描写のトーンもかなり違いますが、事件の推移そのものに変わりはありません。ただしユスティノフ=ポワロが暴く殺人の動機は、本話とは異なっており、アメリカのドラマだけあってかこちらは米版原作に沿っていると思われます。イギリスで放送された折の題も、『MURDER IN THREE ACTS』だったようです。
被害者も犯人も手段も同じながら、その動機は異なるという趣向はなかなか面白く、観比べてみるのも一興でしょう。
プロフィール:ジョージ
僅かな出番ながら、ポワロを世話する様も見慣れてきたジョージ。事件の推移にあまり影響を及ぼさないキャラクターではあるものの、そろそろ、この新たな仲間の横顔にも簡単に触れておきましょう。
原作では計8作に登場するセミ・レギュラーで、元はエドワード・フランプトン卿なる人物に仕えていましたが、ポワロに雇用され、従僕として身の回りと食事の世話をし、時に探偵の手伝いもする役どころ。実は、本ドラマシリーズにおけるミス・レモンの設定は、原作におけるレモンとジョージをミックスした位置づけとなっており、ブライアン・イーストマン製作時代には登場しなかったわけですが、プロデューサーの交代と共に、改めて陽の目を見ることになりました。なお、原作では従僕ですが、ドラマでは格上の執事となっています。
細かい気配りに満ち、料理の腕に秀で、常にクールといった優秀な執事の資質のみならず、人物の特徴分析に長けているのは、『第三の女』において彼による人物評をポワロが傾聴している通り。ドラマ最終話では、ある理由からポワロの下を離れているものの、画面には登場。懐かしきヘイスティングスと感慨深い共演を果たします。