2005年作品
製作:トレヴァー・ホプキンス、監督:セアラ・ハーディング、脚本:ニック・ディア
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:高橋 剛、日本語版翻訳:たかしま ちせこ
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
オリヴァ夫人 … ゾーイ・ワナメイカー/藤波 京子
※ ※ ※
デスパード少佐 … トリスタン・ゲミル/池田 秀一
ロバーツ医師 … アレックス・ジェニングズ/江原 正士
ロリマー夫人 … レズリー・マンビル/田島 令子
ミス・メレディス … リンゼイ・マーシャル/岡本 麻弥
ヒューズ大佐 … ロバート・ピュー/青森 伸
シェイタナ … アレクサンダー・シディグ/東地 宏樹
ミス・ドーズ … ハニーサックル・ウィークス/朴 王路(王路はおうへんに路)美
ジム・ウィーラー警視 … デビッド・ウェストヘッド/辻 萬長
あらすじ
ポワロと作家のミセス・オリヴァは、犯罪芸術をコレクションしているという謎の男シェイタナからディナーに招かれる。食後のブリッジを楽しんだポワロたちが、帰りの挨拶でシェイタナに声をかけると、驚くことに彼はナイフで胸を刺され息絶えていた。捜査や推理を生業とするポワロら4人はチームとなり捜査を開始する。ポワロは生前のシェイタナの言葉から、招待客の中に疑われもせず生きてきた殺人犯がいると考える。
ポワロと作家のミセス・オリヴァは、犯罪芸術をコレクションしているという謎の男シェイタナからディナーに招かれる。食後のブリッジを楽しんだポワロたちが、帰りの挨拶でシェイタナに声をかけると、驚くことに彼はナイフで胸を刺され息絶えていた。捜査や推理を生業とするポワロら4人はチームとなり捜査を開始する。ポワロは生前のシェイタナの言葉から、招待客の中に疑われもせず生きてきた殺人犯がいると考える。
軌道修正する世界(シリーズ)観
マーガレット・ミッチェルが製作した『五匹の子豚』から『ホロー荘の殺人』までの第9シリーズ4作品が、これまでブライアン・イーストマンが築いてきた境地と決定的に違ったのは、個々のエピソードが単独の世界として独立し、シリーズとして他話と共通項を見出す必然性を持たなかったことでしょう。そこにはヘイスティングスもジャップもレモンも居ず、ポワロの日常もほぼ描かれません。あるのは、恐らく二度と登場しない時々のパートナーと、知性と正義を実践するポワロの頭脳のみでした。
しかし前話『青列車の秘密』から製作者に就いたトレヴァー・ホプキンスによって産み出された第10シリーズ作品群からは、おなじみのパートナーたちこそ戻りませんが、新たに、本話よりポワロの旧知オリヴァ夫人、次々話『満潮に乗って』よりポワロの執事ジョージが、セミ・レギュラーとして間歇的に登場。また、転居した新しい部屋ながら、ホワイトヘヴンの事務所兼住居に住む主の様子も再び描かれます。
探偵たち × 犯罪者たち
さて本話は、クリスティが愛好したというカードゲームのブリッジを題材に、限定された空間と人物によって構成されるトリッキーな一編です。密室同然の状況の中、事件を仕掛けたと思しき謎の富豪自身の死を前にする、4人の探偵と4人の犯罪者。いかにも通好みのプロットです。
原作は更にクリスティ・ファン垂涎とも言うべき一作で、ポワロと協力する探偵は、探偵小説家のオリヴァ夫人、ロンドン警視庁のバトル警視と、政府の情報部員レイス大佐。彼らは、ポワロ登場作以外の物語でも活躍するキャラクター。つまり、クリスティ諸作をお読みの方にとって、複数作品の主役級がチームを組んで事件に臨む、クロスオーヴァー的一作なのです。しかしながら、今回のドラマ化に際しオリヴァ夫人を除く二人が、ウィーラー警視とヒューズ大佐という職業設定のみ活かした人物となったことは、残念な限りです。
ギャップの妙
妖しいカリスマの富豪シェイタナに扮するは、アレクサンダー・シディグ。SFファンや米TVファンには、『スター・トレック/ディープ・スペース・ナイン』で7年にわたり演じた柔和で稚気あふれるドクター、ベシア役でおなじみでしょう。シェイタナはベシアとはかけ離れた役柄ですが、他にもヒットTVシリーズ『24 Ⅵ』で、これもまた悪とも善ともつかない複雑なキャラクター、テロリストのアサド役を好演しています。