2003年作品
製作:マーガレット・ミッチェル、監督:ポール・アンウィン、脚本:ケビン・エリオット
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:蕨南 勝之、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
※ ※ ※
キャロライン・クレイル … レイチェル・スターリング/萩尾 みどり
アミアス・クレイル … エイダン・ギレン/松橋 登
フィリップ・ブレイク … トビー・スティーブンス/山路 和弘
メレディス・ブレイク … マーク・ウォーレン/牛山 茂
ルーシー・クレイル … エイミー・マリンズ/小林 さやか
エルサ・グリヤー … ジュリー・コックス/深見 梨加
ミス・ウィリアムズ … ジェマ・ジョーンズ/八木 昌子
アンジェラ・ウォーレン … ソフィー・ウィンクルマン/佐々木 優子
ディプリーチ … パトリック・マラハイド/小林 尚臣
あらすじ
ルーシー・クレイルの母親は、画家である夫を殺した罪で死刑に処されていた。しかし彼女は、娘に自らの無実を告げる手紙を遺しており、その言葉を信じてルーシーは、真相の解明をポワロに託す。彼女の切なる依頼を請けたポワロは、14年前に起きた事件の関係者である両親の親友や幼馴染、愛人、クレイル家の家庭教師、そしてキャロラインの異父妹アンジェラを訪ね、5人それぞれが語る当時の様子から事件の真相に辿りつく。
ルーシー・クレイルの母親は、画家である夫を殺した罪で死刑に処されていた。しかし彼女は、娘に自らの無実を告げる手紙を遺しており、その言葉を信じてルーシーは、真相の解明をポワロに託す。彼女の切なる依頼を請けたポワロは、14年前に起きた事件の関係者である両親の親友や幼馴染、愛人、クレイル家の家庭教師、そしてキャロラインの異父妹アンジェラを訪ね、5人それぞれが語る当時の様子から事件の真相に辿りつく。
一大転換点
本話を以ってシリーズは、これまでの49話分を前半、以降の21話分を後半と呼称してもいいほどの一大転換を迎えます。後半シリーズ最大の特徴は、ポワロを除くヘイスティングス、ジャップ、レモンのレギュラー3人が登場しなくなること。そして、この作品の最大の魅力のひとつであるユーモア描写が極端に減り、ドラマの語り口はこれまでと比べてぐっと暗いトーンになります。
どちらの変節も、これまでの諸作を満喫したファンには寂しい限りでしょうが、ブライアン・イーストマンと交代し、本話から製作の任に就いたマーガレット・ミッチェルの狙いは、ユーモアの代わりに、ポワロをはじめとする登場人間の本質を一層、掘り下げたいということのようです。本話以降、しばしば描かれるシリアスな叙情をたたえた構図と、ひとり晩年へと向かうポワロの孤独な姿は、前半シリーズにはついぞ描かれなかった描写です。
時の狭間を漂うように
本話は、狡猾な殺人と運命の皮肉が織り成した悲劇を、多角的な視点と移ろう時の郷愁の内に、情感豊かに描いています。主人公ルーシーは長き時を乗り越え、両親の死の真実を得ようとポワロを頼り、その願いを受け入れた彼は、関係者5人を訪ね歩くことで、過去の真実へと至ります。見所は "子豚"たちの14年を隔てる演じ分けと、その時間を飛び越えて揺れる悲しいノスタルジー。そして、まるで時の狭間を漂うように、ステッキ片手に"五匹の子豚"を訪ね歩く寡黙なポワロの描写です。
なおタイトルはおなじみ、マザー・グースの数え唄から採られたもの。5人の容疑者の行動は、詞に唄われる子豚の描写をなぞらえています。
名脇役と、もう一人の主役
家庭教師のミス・ウィリアムズに扮し、独身英国婦人の生真面目さを巧みに表現しているのは、『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)及びその続編でブリジットの母親、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002)他でホグワーツの校医マダム・ポンフリーも演じているヴェテラン女優ジェマ・ジョーンズ。
もう一人の主役とも言うべきキャロラインに扮しているのは、『女王陛下の007』(1969)や、文字通り抜群の作品センスでファン人気も高い'60年代ドラマ『おしゃれ(秘)探偵』のヒロイン、エマ・ピール役で知られるダイアナ・リグの娘、レイチェル・スターリングです。