英国テレビ文庫itvコレクション名探偵ポワロ徹底解説 名探偵ポワロ徹底解説TOP 英国テレビ文庫itvコレクション特設サイト アクロイド殺人事件

1999年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:アンドリュー・グリーブ、脚色:クライブ・エクストン
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:佐藤 敏夫、日本語版翻訳:宇津木 道子

アクロイド殺人事件

出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
      ※   ※   ※
シェパード医師 … オリヴァー・フォード・デヴィース/中村 正
ロジャー・アクロイド … マルコム・テリス/稲垣 隆史
キャロライン・シェパード … セリーナ・キャデル/谷 育子
アーシュラ・ボーン … デイジー・ボウモント/渡辺 美佐
フローラ・アクロイド … フローラ・モントゴメリー/名越 志保
ジェフリー・レイモンド … ナイジェル・クック/納谷 六朗
ラルフ・ペイトン … ジェイミー・バンバー/大滝 寛
パーカー … ロジャー・フロスト/斎藤 志郎
ヴェラ・アクロイド … ヴィヴィアン・ハイルブロン/吉野 佳子
デイビス警部 … グレガー・トラター/森田 順平

あらすじ
ポワロは、イギリスの片田舎に居を構え、隣人のドクター・シェパードと親しくなるなど、静かな引退生活を楽しんでいた。 しかし、地元の裕福な事業家ロジャー・アクロイドが自宅の書斎で殺されたことでポワロは、事件の解決に乗り出すことになる。ポワロから見ると、アクロイド家のメイドから秘書、そして家人と、全員に疑わしい点があった。そんな時、死んだアクロイドの遺産を一番多く受け取るはずのラルフが急に失踪する。

ポワロ引退後の物語
ポワロが廃業後、隠居した村で遭遇した狡猾極まる殺人事件を描く物語。本ドラマシリーズ中期の後半といったこの時点でポワロは一旦、探偵業から引退していますが、原作は、ポワロの長編としては『ゴルフ場殺人事件』の次に書かれた三作目に当たります。
本話の半ばで、調査のためロンドンに赴いたポワロが、まだキープを続けているホワイトヘヴン・マンションの部屋を訪れ、探偵の身上の因果と郷愁の狭間で揺れる本音を吐露する様子が描かれます。この心情は、最終話『カーテン ~ポワロ最後の事件~』のラスト、つまりシリーズ全体を締めくくるラスト・シーンのポワロの回顧と対応する様でもあり、とても興味深いものです。

驚天動地のトリック
本話の原作小説は、謎解きを主眼とするいわゆる本格ミステリにおけるクリスティの名を不動のものとした、彼女の代表作のひとつ。その一方、犯人の正体をカモフラージュする、既成を逸脱した奇想天外なトリックは、賛辞と共にアンフェアだという批判も浴び、斯界を二分する大論争となりました。
本ドラマ化に際してはメディア特性の違いの為か、このトリックの扱いは少しアレンジされています。ただし筋や設定、作品構造は基本的に原作と変わりません。にも関わらず、結末まで視聴しても"原作における驚愕"は得られず、驚愕の意味も恐らく判らないでしょう。詳細は述べられませんが、この訳を知りたい方には、ドラマを見る前に原作を読むことをお勧め致します。

プロフィール:ジェームズ・ハロルド・ジャップ[2]
キングス・アボットにて、引退したポワロと偶然にも再会を果たし、快哉を叫ぶジャップ。シリーズ初期には、ポワロが劣勢と見れば皮肉を放ち、鼻先で事件を解決されれば地団駄を踏む、お約束のライバル警部でした。しかし回を追うにつれ協力的になり、悪びれず助力を求め、やがては心ゆくまで捜査をさせ、プロとしてヘイスティングスより専門的なセオリーを述べてポワロの推理を浮き彫りにする良き友人となりました。気付けばその登場回数も本ドラマシリーズ全70話中40回と、ヘイスティングスと僅か3回しか差がない活躍です。
彼の才は云うまでもなく長年の経験と培った勘ですが、今に至る実績をつかみ得たのは、正にその経験と勘から"ポワロの言動と能力を軽んじるなかれ"と熟知しているが故。これこそ、このシリーズにおける彼の本質に繋がる特徴です。立場や面子に囚われず真犯人逮捕という結果を重視する、その潔さと正義感に満ちた友情を示す彼もまた、ヘイスティングスとレモンと云うヴァリエーションに並ぶ、ポワロのパートナーの一人なのです。
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