1990年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:リチャード・スペンス、脚色:クライブ・エクストン
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
※ ※ ※
ノートン・ケイン … アダム・コッツ/中尾 隆聖
メアリ・デュラント … キャロライン・ミルモー/玉川 沙己子
ミス・ペン … エルスペット・グレイ/藤波 京子
ヴィニー巡査部長 … デビッド・ハーグリーブス/緒方 賢一
フラッグ巡査 … ジェラルド・ホラン/島香 裕
ベーカー・ウッド氏 … マイケル・J・シャノン/北町 嘉朗
レディー・アマンダ・マンダレイ … アマンダ・ガーウッド/田中 真弓
バスツアー会社職員 … ポール・ガブリエル/島田 敏
あらすじ
事件に恵まれず退屈していたポワロは、海辺の町ウィットコムにいた。バス旅行に出たポワロは車中で、叔母の使いでアンティークの細密画を配達中だというメアリと親しくなる。しかし目的地で彼女がスーツケースを開けると、中身が盗まれており…。右往左往しながら事件を調べるヘイスティングスに対して、引退したと素っ気ない態度のポワロ。しかしジャップ警部が講演で彼に賛辞を送ったことで気を良くし、やっと調査に協力する。
事件に恵まれず退屈していたポワロは、海辺の町ウィットコムにいた。バス旅行に出たポワロは車中で、叔母の使いでアンティークの細密画を配達中だというメアリと親しくなる。しかし目的地で彼女がスーツケースを開けると、中身が盗まれており…。右往左往しながら事件を調べるヘイスティングスに対して、引退したと素っ気ない態度のポワロ。しかしジャップ警部が講演で彼に賛辞を送ったことで気を良くし、やっと調査に協力する。
二重の罪の真相
これまでのリゾート編に比べると小規模な旅ながら、美しき湖水地方を背景に、バス旅や本場のパブの趣を散りばめつつ、様々な登場人物たちが入り組んだプロットを構成する小品です。
事件の核心から目をそらす様々なミスディレクションが用意されていますが、真相はいたってシンプル。そして犯行を企む犯人の行為や会話は多々、隠されることなくストレートに描写されています。本話を見終わった後に是非、再度見返しチェックしてみて下さい。
感動を呼ぶスピーチ
奇しくも、いや当然の如く旅先で出会ったジャップの講演をポワロが忍び聴くシークエンスは、事件に直接関わらないサイド・ストーリーですが、このドラマにおけるポワロとジャップの人物設定を非常によく表わしている件です。
曰く、私立探偵という輩はいかに始末に負えない連中であることか。しかしその中にあってエルキュール・ポワロは唯一の別格、あらゆる点で他に抜きん出て優れた人物である、と。やや誉めすぎな感もありますが、これが、いままで何度となく競うもことごとく歯が立たなかった相手に対するジャップの掛け値ない評価であり、誇張もやっかみもない本心なのだと思うと、その潔さに感動を禁じ得ないスピーチです。
それを秘かに耳にしたポワロと云えば、初めは落胆と怒りに凍りついた風でしたが、話の風向きが変わり、思いがけぬ感激と喜びに輝く様が、スーシェの抜群の演技によって繊細に表現されています。 ポワロほどの叡智はないが、大いなる器量のジャップ。偉大なる頭脳の半面、感情的な脆弱さが何ともチャーミングなポワロ。そんな二人の関係が、"ライバル"から"チーム"へと時代を折り返していく、その端緒のひとつが窺える本話です。
ミス・レモンの事件
序盤、ジョージ・リトル演じるおなじみのドアマンが、今回はいつもより少し長い出番でミス・レモンとのやりとりを見せます。それをきっかけに、ポワロたちとは別件の小さな事件を抱え込み、事務所泊まり込みでその謎に挑むレモン。ポワロの持論、"秩序と方法"の教えに従って、無事に答を見つけますが・・・本話を見返してみますと、その真相もまた、画面にきちんと描写されていたことが分かります。
日本語吹替でのトピックは、田中 真弓氏が演じた麗しきレディー・アマンダ・マンダレイ。TVアニメーション『ワンピース』のルフィや『ドラゴンボール』クリリンなど、今や豪傑男子キャラクターの担い手最高峰の一人として知られる田中氏ですが、これまでにはもちろん、こうした女らしさ溢れる役柄も多々演じて来られたという好例です。