英国テレビ文庫itvコレクション名探偵ポワロ徹底解説 名探偵ポワロ徹底解説TOP 英国テレビ文庫itvコレクション特設サイト 夢

1989年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:エドワード・ベネット、脚色:クライブ・エクストン
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子

夢

出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
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ヒューゴー・コーンワージー … アラン・ハワード/阪 脩
ジョアンナ・ファーリー … ジョエリー・リチャードソン/水沢 アキ
ファーリー夫人 … メアリー・タム/井上 瑤
ハーバート・チャドリー … マーティン・ウェンナー/曽我部 和恭
トレムレット氏 … クリストファー・ソウル/糸 博
スティリングフリート医師 … ポール・ラコウ/城山 知馨夫

あらすじ
パイ工場の経営者ファーリーから一通の手紙を受け取ったポワロは、工場内にある彼の家を訪ねる。繰り返し自殺する不可解な夢を見ている彼は、誰かが催眠術で自分を殺そうとしているのでは-と疑っているのだった。ポワロは、その態度や依頼ともつかない彼の話に釈然としないまま工場を後にした。後日ファーリーが、ポワロに話した夢と同じような方法で自殺をする。しかしポワロは、その死に疑問を持ち調査を始める。

不可思議な事件
意思に反して自殺する夢を繰り返し見てしまうという相談を受けるポワロ。そしてその面会から程なく、彼はその富豪が自殺したとの報せを耳にする…。これまでとは一線を画し、何とも不可思議な面会の場から超自然的とも思える事件発生に至るまでを、怪奇なテイストが彩ります。これもクリスティのタッチ、そして本シリーズが見せるヴァリエーションの一種です。

定番のスタイル
後に控える『マースドン荘の惨劇』等、怪奇ムードが持続する回もありますが、本話では半ばからその空気も醒め、超自然に偽装した現実的な謀殺の線が見え始めます。核となるトリックは、勘のいい方なら比較的早くに気付かれるでしょうし、期せずしてレモンが与えるヒントはかなり分かり易く、本シリーズにおいては謎解き入門編と云ったところ。しかしトリックを可能とする背景や機会、偽装の筋書きにその為の布石の巧みさ。このトリックをしてこの物語を描き得たイマジネーションは、非凡な作家の為せる業でしょう。
ところで本話のように、犯行トリックを明解かつショッキングに再現する仕方や、真犯人が露見した後にも更にひと悶着があるプロセスは、回が進むにつれ少なくなって行きます。僅かな時間でも見せ場ありのアクションで最後の盛り上げを見せるのも、頻度的にはレアな見所。しかし結末直前のポワロの怪気炎「関係者に集まってもらうよう伝えて下さい!」が象徴する、解決編の全員集合スタイルは、本シリーズの王道パターンです。

ニュース映画は語る
冒頭、物語の背景となるトピックがニュースで語られますが、この様に、時代が偲ばれるニュース映画を使った演出も、このシリーズの定番のひとつです。本話のこれは、現在の時制へと色変わりしていくラスト・ショットを除いて、質感や顔つきなどから、本物のニュース・フィルムを流用しているように見えます。
なお、吹き替えでは判然としませんが、ニュース映画の原語ナレーションは『コックを捜せ』でベルグラビア銀行のキャメロン氏を演じた俳優リチャード・ベブが担当しています。
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