1993年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:ブライアン・ファーナム、脚色:クライブ・エクストン
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
※ ※ ※
グレイブス … レオナード・プレストン/羽佐間 道夫
マルゲリータ・ファブリ … アンナ・マツォッティ/吉田 理保子
ブルーノ・ビッツィーニ … デビッド・ニール/内田 稔
マリオ・アスカニオ … ビンチェンツォ・リコッタ/屋良 有作
フォスカティーニ伯爵 … シドニー・キーン/伊藤 和晃
ホーカー医師 … アーサー・コックス/上田 敏也
ミス・ライダー … ジャネット・リース・プライス/牧野 和子
あらすじ
ポワロは友人の医師の家で食事をしていた。そこへフォスカティーニ伯爵と名乗る人物から助けを求める電話が入る。ポワロ達がフォスカティーニのアパートへ駆けつけると、伯爵は電話の横で、頭に一撃を受け死んでいた。ポワロは部屋の様子に疑問を持つ。一方、ヘイスティングスは、死んだ伯爵の顔を見て、イタリア車のショー・ルームで会った男だと気づく。ポワロは部屋の状況から、殺人の背景を推理していく。
ポワロは友人の医師の家で食事をしていた。そこへフォスカティーニ伯爵と名乗る人物から助けを求める電話が入る。ポワロ達がフォスカティーニのアパートへ駆けつけると、伯爵は電話の横で、頭に一撃を受け死んでいた。ポワロは部屋の様子に疑問を持つ。一方、ヘイスティングスは、死んだ伯爵の顔を見て、イタリア車のショー・ルームで会った男だと気づく。ポワロは部屋の状況から、殺人の背景を推理していく。
車好き、猫好き、仕事好きな人々
モータリゼーションには冷ややかで、また友人の数分の遅刻さえ許せないはずの我等が主人公ポワロ。ところが本話では幕開け早々、ヘイスティングスの新車物色に相伴し、ミス・レモンの長めの昼休みも気にかけず、彼らパートナーたちの買い物と恋路の成功を願う風を見せる等、いつになく大器ぶりを披露します。しかし、そんなヘイスティングスの新車購入とレモンの交際の件は期せずして、同じ殺人事件へと結びついていくのでした。
ジャップこそいつも通りの活躍ながら、久々に、本筋においてレギュラー陣の個性が花咲く、キャラクター・ファン好みの一編です。
"シンプル"なり、ヘイスティングス
鏡に映った反転像から、事件の本質に至るきっかけをつかむポワロ。彼はこのことをヘイスティングスに説明しようとしますが、真相どころか、まず反転のことさえすぐに飲み込めないヘイスティングス。かつて『西洋の星の盗難事件』事件では、解決後においてさえ、事の起こりとも言うべき宝石のからくりを理解できていませんでした。今後の事件では、ポワロが次々と提示する疑問に"判らない"を連発、一巡すると"最初の疑問は何だっけ"と漏らす描写さえあります。
天才ポワロの引き立て役、あるいはその謎解きを判り易く視聴者に提示するための白紙のような役回りなのでしょうが、それにしても本話のように、その愚鈍さの描写が過ぎるきらいもあるようです。
演じるヒュー・フレイザーも時として、彼は"シンプル"であって"愚か"ではないと、愚問を繰り返すばかりの描写に不満げだったこともあったようです。
ちなみに、原作のヘイスティングスは名門イートン校出身、従軍前は保険会社勤務の経歴を持ち、ポワロとの仕事ではその活躍の記録者でもあるのです。
再登場の二人
ポワロのよき友人、医師のホーカーは本話をふくめた2編のみの顔見せながら、後の『グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件』にも再登場。演じているアーサー・コックスは、クリスティの産んだトミー&タペンスが活躍するTVシリーズ『二人で探偵を』にも、マリオット警部役としてセミ・レギュラー出演しています。
もう一人、捜査の鬼ジャップ主任警部の下、ちゃきちゃきと任務に励む生真面目な部下ベドーズを演じているベン・バゼルは、実は、先の長編『愛国殺人』にも同巡査部長役として出演しており、本話で再登場となりました。