1993年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:ピーター・バーバー・フレミング、脚色:アンソニー・ホロウィッツ
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
※ ※ ※
バートン・ラッセル … デビッド・トロートン/小林 修
アンソニー・チャペル … ドリアン・ヒーリー/鈴置 洋孝
ポーリン・ウェザビー … ジェラルディン・サマヴィル/小山 茉美
ローラ … ヨランダ・ヴァスケス/弥永 和子
アイリス・ラッセル … ロビン・マカフリー/松島 みのり
スティーブン・カーター … ヒュー・ロス/矢田 耕司
ルイジ … ジョセフ・ロング/辻 親八
ペレイラ将軍 … ステファン・グリフ/石森 達幸
ホテルの受付係 … アーチュロ・ヴェネガス/簗 正昭
あらすじ
ヘイスティングスは、ポワロにフランス料理の新しいレストランのオープンを知らせる。ポワロはその名に聞き覚えがあった。2年前遭遇した事件の起こったレストランと同じ名前だったのだ。その事件とは、バートン・ラッセルの妻アイリスが、グラスに入った酒を口にして死んだというものだった。彼は亡き妻の2周忌のために、2年前と同様にそのレストランに6人分の席の予約を入れていた。悪い予感を覚えたポワロは調査に乗り出す。
ヘイスティングスは、ポワロにフランス料理の新しいレストランのオープンを知らせる。ポワロはその名に聞き覚えがあった。2年前遭遇した事件の起こったレストランと同じ名前だったのだ。その事件とは、バートン・ラッセルの妻アイリスが、グラスに入った酒を口にして死んだというものだった。彼は亡き妻の2周忌のために、2年前と同様にそのレストランに6人分の席の予約を入れていた。悪い予感を覚えたポワロは調査に乗り出す。
繰り返される、殺人と原作
ブエノスアイレス、そしてロンドン。2年の時を経て同じレストランで繰り返されようとする殺人。杯を干して死んだアイリスを殺した犯人は果たして、被害者自身をふくむテーブルを囲んだ6人の中にいるのか?そして近接したテーブル席で彼女に毒を飲ませた手段は?トリックそのものは小粒ながら、時を経てシチュエーションが再現され、殺人もまた繰り返されようとするプロットの味わいがミステリ・ファンの好奇心をくすぐります。
本話の原作となった同名短編小説は、クリスティ自身によって長編小説『忘られぬ死』に翻案されました。ただしこれはポワロ登場作品ではなく、したがって、残念ながら本ドラマシリーズにもラインナップされてはおりません。
アルゼンチンのヘイスティングス
原作、ドラマ共に南米に縁のあるヘイスティングス。本話ではいつも通りポワロと共に探偵を営んでいるように見えますものの、政変によって国外退去させられ事件を解決できなかった苦い思い出を語るポワロの話により、何とこの2年前にはアルゼンチンに住んでいたことがわかります。彼が農場を持っていたラパンパ州はブエノスアイレスの西方、アルゼンチン中部に位置し、またパンパスと云う温帯草原の南西部にあたります。
一日三朝食
イギリス式朝食とは、食事の不味い国として世界的に有名なイギリスで、例外的に美味しいとされるメニュー。『月と六ペンス』で知られる作家サマセット・モームは、"イギリスで美味しい食事を食べたければ三食、朝食をとれ"と皮肉を述べたと云います。メニュー内容は、ヴァリエーションで微妙に異なりますが、本話でヘイスティングスが述べている「おかゆ(オートミール)に、卵、ソーセージと、ベーコン、トマト、トーストにはマーマレード、それに紅茶」がスタンダードなところでしょう。
ヘイスティングスに勧められてもポワロは、それはどんなものかとか、そんな食事をしたら寝込んでしまうと一喝します。かつて『ジョニー・ウェイバリー誘拐事件』においては、かなり楽しみにしている風だったのに…?その時は結局ありつけませんでしたが、その後に食して懲りたということか、それとも本話はそれ以前の物語なのでしょうか。しかし当時のヨーロッパでは、朝食は概して簡素であったのに対し、イギリス式は例外的に栄養、カロリー共にボリュームあるものだったわけで、ポワロが敬遠するのも不自然なことではないのかもしれません。