1992年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:アンドリュー・グリーブ、脚色:クライブ・エクストン
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子
出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
※ ※ ※
カスト … ドナルド・サンプター/矢田 稔
フランクリン・クラーク … ドナルド・ダグラス/内田 稔
ドン・フレーザー … ニコラス・ファレル/玄田 哲章
ミーガン・バーナード … ピッパ・ガード/榊原 良子
メアリ・ドロウワー … キャスリン・ブラッドショー/吉田 理保子
ソーラ・グレイ … ニーナ・マーク/弥永 和子
グレン警部 … デビッド・マカリスター/江原 正士
ミス・メリオン … アン・ウインザー/斉藤 昌
フランツ・アッシャー … マイケル・メリンジャー/藤本 譲
カー医師 … アラン・ミッチェル/峰 恵研
バーナード氏 … ジョン・ブレスリン/村松 康雄
あらすじ
今月の21日、アンドーバーを警戒されたし―。ポワロのもとに送られてきた挑戦状の予告どおり、殺人が起こる。アッシャーというAの頭文字の老婆が撲殺されたのだ。その後も挑戦状が届き、ベクスヒルでBの頭文字の娘が、チャーストンでCの頭文字の初老の紳士が殺された。しかも現場には必ずABCの鉄道案内が残されている。犯行現場も被害者のイニシャルもABCの順に起こる連続殺人事件に、名探偵ポワロが挑む。
今月の21日、アンドーバーを警戒されたし―。ポワロのもとに送られてきた挑戦状の予告どおり、殺人が起こる。アッシャーというAの頭文字の老婆が撲殺されたのだ。その後も挑戦状が届き、ベクスヒルでBの頭文字の娘が、チャーストンでCの頭文字の初老の紳士が殺された。しかも現場には必ずABCの鉄道案内が残されている。犯行現場も被害者のイニシャルもABCの順に起こる連続殺人事件に、名探偵ポワロが挑む。
長編の魅力
いよいよ、あと8編ほどで原作短編の映像化をほぼ終え、全て長編ドラマとなるシリーズ後半に突入することになりますが、第5シリーズとなるその8短編の前に、プレシリーズとも言うべき長編3本がラインナップされました。
長編と言えば本シリーズではこれまで、前後編で『エンドハウスの怪事件』、スペシャル編で『スタイルズ荘の怪事件』と、名実共に優れた傑作を放ってきましたが、今回の3本の先鋒となる本話も、そのエンターテインメント性において肩を並べる名作です。ABC順に実行されていく奇態な連続殺人の怪異さ、そしてそれはもちろん愉快犯による無軌道な犯行などではなく、知能犯による狡猾な計画殺人として仕組まれている構造はさすが、プロットの匠クリスティならではの物語と言えます。
おなじみの面々の特徴
さて、奇異なる展開に息を呑む合間に、ちらほらと見受けられる細かい点をいくつかピックアップ。帰国したヘイスティングスの荷物に記されたイニシャルから、彼のフルネームはアーサー・J・M・ヘイスティングスであるらしいことが窺えます。
ポワロは久々に再会したこの愛弟子をホワイトヘヴン・マンションへ連れて行きますが、『4階の部屋』の時と比べ、エレベーターなど近代化された様子。
恐妻家ジャップが例によって姿を見せぬ妻に対し、電話越しに「エミリー」と呼称します。また、彼女から命じられた買い物リストのメモや、その買い物と思しき品をロッカーから取り出す様子から、彼が左利きと分かります。
プロフィール:アーサー・ヘイスティングス[2]
本話の冒頭、南米から帰国し、そこで遭遇した冒険談をことあるごとに披露しようとしてもポワロやジャップに露骨に無視され、可愛そうなヘイスティングス。ところで彼は、『二重の手がかり』でも南米への関心を口にしていますが、実際、彼の地はその人生において多くを占める土地となります。
原作におけるヘイスティングスは、『ゴルフ場殺人事件』で知り合ったアクロバット芸人の女性と結婚後、南米へ移住して農場を経営。男女二人ずつ、計四人の子に恵まれます。
一方、ドラマでの彼はと言えば、これと似つつも微妙に異なる人生を送ることに。その辺りをお知りになりたい方は、後の放送となる『ゴルフ場殺人事件』、そして『エッジウェア卿の死』を、どうぞお見逃しなきよう。