ドラマシリーズ「名探偵ポワロ」
このドラマは、もはやミステリ・ファンのみならず、ひろく一般にまで女流推理作家として名を知られるアガサ・クリスティの著作中、最も多作品で活躍する主人公、エルキュール・ポワロの物語を原作としたシリーズです。 制作国のイギリスではITVネットワークより１９８９年から放送開始。原作イメージを抜群の説得力で立体化しコアなファンをも驚かせたポワロ像、様々な設定と美術によって醸し出される１９３０年代の芳香、ユニークなキャラクターやコメディ・タッチなどが功を奏し、富裕な描写のうちに知的なプロットが楽しめる一級エンターテインメントとして大ヒット。レギュラー放送の後にも、不定期のスペシャル編として続き、第１話から四半世紀近く経った２０１３年の最終話放送までにポワロが登場する原作のほぼ全てを映像化。本格ミステリのドラマシリーズにおける金字塔を打ち立てました。

大いなる４人
物語は基本的に一話完結。私立探偵を営むポワロは毎回、謎に満ちた事件に遭遇するも、自慢の知性を駆使して真実を見抜き、物語の終盤で、表向きとは大いに異なる意外な真相を暴き出します。
その能力は極めて非凡ながら、それでもポワロが単身で事件に臨む物語は少なく、大抵の場合は、協力し共に事件解決を目指す仲間がおり、中でもシリーズ全70話の約３／４にわたって３人の魅力的なレギュラーが入れ替わり、あるいは総出で活躍しています。警察官時代のポワロが取り調べた縁で、その能力と人柄に魅せられてポワロと共に探偵事務所を営むヘイスティングス大尉。やはり警察官時代のポワロと某事件で捜査を共にして以来、その慧眼を尊んでいるロンドン警視庁のジャップ主任警部。類まれな書類分類能力を誇るポワロの有能な秘書ミス・レモン。そして大言壮語とそれに見合う洞察力を発揮する名探偵ポワロを加えた"大いなる４人"の活躍こそ、このシリーズの本質だと言えます。