1871年、パリ。閉ざされた扉の奥で男たちを誘う高級娼館(メゾン・クローズ)は、男たちのあらゆる欲望を満たし、ときに重要な社交場となった。華やかで退廃的な娼館で体を張って生きる女たち。
オルタンスは高級娼館パラディの女主人。我儘な娼婦たち、悪党の金貸し、あらゆる逆境に耐え、女手一人でこの娼館を守ってきた。
誰もがうらやむ高級娼婦ヴェラ。パラディで一番人気の彼女も35歳を迎え、娼婦として生きていけるのはあとわずかだと感じていた。
美しいローズは、かつて娼婦だった母を探しにパリへやって来た。世間知らずの彼女は、スカウトマンに騙され、強制的にパラディに雇われてしまう。
華やかなパリを象徴する高級娼館を舞台に、運命に翻弄される娼婦たちの人生と、そこで起こる殺人事件が交錯し、ミステリアスな物語が紡がれていく。
製作・脚本は「マダムと奇人と殺人と」のジャック・ワニシュ。監督に「その男 ヴァン・ダム」のマブルク・エル・メクリ。フランスの有料チャンネル、カナル・プリュスで大きな話題を呼び、シーズン2も好評放送中の人気ドラマが日本初上陸。
『ドラゴン・タトゥーの女』『第9地区』等でも使用された最新鋭カメラ、レッド・ワン(red one)で撮影された映像は、19世紀パリの娼館を絵画のように美しく描き出す。
19世紀後半、フランス政府は風俗の無秩序化を回避するため、娼館を行政の監視下におくようになる。「メゾン・クローズ(閉じられた家)」と呼ばれた娼館は、「政府公認」の娼館の呼称であった。メゾン・クローズは、一般社会の目に触れないように、扉は二重で締められ、窓には鉄格子がはめこまれていた。さらに、そこで働く娼婦たちはめったに外出許可を得られず、検診も娼館内で行われるなど、行動が徹底的に監視された。
メゾン・クローズの経営者は、女性であることが要求され、その多くは娼婦上がりの女性が務めた。女将の夫に限って、経営への参画が認められ、娼婦を調達する周旋屋(スカウトマン)を兼業する場合も多かったという。
パリの高級メゾン・クローズでは、客をもてなすために、インテリアや料理などサービスにも大いにこだわった。本作「メゾン・クローズ 娼婦の館」でも、二重扉を越え、長い廊下を抜けると、豪奢なサロンが広がり、高級シャンパンや料理が振る舞われ、饗宴が繰り広げられる。メゾン・クローズの高級店は上流階級にとっての社交場としても栄え、パリの名物となっていった。
第1条
すべての娼婦に自宅への帰省を禁じる。
また、扉の前や街頭をふらつくこと、無断外出を禁じる。
第2条
許可を得て外出する際は、会話をできるだけ避け、
身なりや行動に慎みを忘れぬこと。
いかなる理由があっても外泊は認めず、日没前に帰宅すること。
第3条
女性や子供を連れた男性に声をかけることを禁じる。
教会の20メートル以内と学校周辺にも近寄らぬこと。
第4条
毎週木曜日の検診を義務化する。
第5条
これらの規則を守れなかった者は「品質が落ちた」とみなし、
真に反省し、心と体の健康状態が「良」と判断されるまで
監視下に置くものとする。
1871年、パリ。高級娼館パラディの一番人気ヴェラは、なじみ客の男爵に身請けされることを望むが、ヴェラを愛する女将オルタンスがそれを許さない。かつて娼婦だった母を探しにパリへやって来た少女ローズは、画家を装ったスカウトマンに騙され、強制的にパラディに雇われてしまう。そんな中、借金を返せるほどの身請け金をオルタンスが断ったことが、金貸しルパンの耳に入り・・・。
男爵の死により大きな負債をかかえたヴェラは、再びパラディで身売りすることを約束させられる。ローズは隙を見てパラディを脱走するが、婚約者に見限られ、風俗を管理する警官の手でパラディに連れ戻されてしまう。そんな中、パラディの娼婦ルイーズが客を装った男に硫酸をかけられる事件が発生。金貸しルパンの差し金と悟ったオルタンスは、借金を返すため、処女であるローズを利用することに・・・。
高級娼館パラディの女将の弟ピエールが久しぶりにパリに戻って来た。パラディの窮状を知ったピエールは、店を救うために新人ローズへ処女を捨てるよう説得する。一方、殺された男爵が持っていた首飾りが同僚の娼婦アンジェルの手に渡っていることを知ったヴェラは、警察に調査を依頼する。そんな中、娼婦たちの生態を調査する教授がパラディに現われ、科学的に娼婦を分析しようとするが…。
恋人からもらった首飾りを売ろうとした娼婦アンジェル。その首飾りが殺された男爵のものだと判明したため、警察に拘留されてしまう。警察の狙いはアンジェルの恋人ブリズだったが、彼の居場所について固く口を閉ざすアンジェル。一方、処女を捨てたローズは自暴自棄になり薬に頼る毎日を送る。ある日、同僚のカメリアから昔パラディで働いていたという母の話を聞いたローズは、意を決して女将に尋ねることに…。
仕事上の接待でパラディを訪れた女将の弟ピエール。しかし、弟をよく思っていない女将は娘たちを部屋に閉じ込め、客の相手をさせようとしない。ピエールは女将が愛する娼婦ヴェラを通じて説得し、娘たちを部屋から出すことに成功する。一方で、妹からも不倫中の男にゆすられていると相談を受けたヴェラ。客からもらった宝石を妹に渡し、その見返りとして妹の子として育ててもらった実の娘に会えることに…。
突然、女将のもとに現われたアンジェルの恋人ブリズ。夜までにアンジェルに会わせないと、女将に男爵殺害を依頼されたという告白書を持って警察に行くと脅す。一方、ブリズが警官に追われて死んだという噂を聞いたアンジェル。職務のために店を訪れた警視をののしり、その結果、手酷い暴行を受ける。そして、約束の時間に再びパラディを訪れるブリズ。女将に相談されたピエールは姉と娼館を守るため、ある決断をする…。
ブリズの子を身ごもったアンジェルは出産を望むが、借金をかたにとる女将がそれを許さない。ローズは娼婦たちが借金を自己管理できるよう借金帳を作ることを女将の弟ピエールに頼む。そんな中、夫が娼館の娘と逢瀬を重ねていることに気を揉んだピエールの妻エリザベスがパラディを訪れる。夫の恋人にサービスさせることを望むエリザベスに対し、女将はベテラン娼婦のヴェラをあてがうが…。
弟ピエールの悪辣なたくらみを知った女将は必死に止めようとするが逆に暴行されてしまう。女将からピエールの計画を聞いたヴェラは、娼館の売却を条件に悪党ルパンにピエールの始末を依頼するよう女将に提案する。一方、副女将から自分と母親に降りかかった過去の秘密を聞き出したローズ。彼女もまた、復讐を胸にピエールの元へと向かう…。衝撃のクライマックスが待つ最終話。